索引 の短い説明に加え、仕事・力積・保存力と道筋について、会話で整理した内容をまとめます。変位の記号は 質点と剛体の概要 を参照してください。
仕事とは
仕事(work)は、力が変位に沿ってどれだけ寄与したかを、道に沿って積み上げた量(スカラー)です。単位は ジュール(J) で、エネルギーと同じ次元です。日常語の「仕事(労働)」とは別の物理量の名前です。
ジュール(J)
ジュールは、仕事・エネルギー・熱などの SI 単位です。定義のつながりとして、
$$ 1,\mathrm{J} = 1,\mathrm{N}\cdot\mathrm{m} $$
です。すなわち 「1 N の力が、力の向きに 1 m 動くのに沿ってした仕事」の大きさが 1 J と覚えてよいです。運動エネルギーや位置エネルギーも、次元は同じで J で表します。
直線で力の大きさが一定、かつ力の向きと動きの向きが一致するなどの単純な場合以外でも、一般には経路に沿った積分として定義されます。「どのくらい影響したか」という気持ちには近いですが、物理では力と変位の組み合わせ(内積の積分)という決まった数え方に対応します。
仕事と力積
力積(impulse)は、力を時間で積み上げた量です。運動量の変化と結びつきます。単位は N·s などで、仕事(J)とは次元が異なります。
| 量 | ざっくり足すもの | 単位の例 | つながりやすい変化 |
|---|---|---|---|
| 仕事 | 力と変位(道に沿って) | J(N·m) | エネルギーの移り変わり |
| 力積 | 力と時間 | N·s | 運動量の変化 |
同じ力でも、**「どのくらい」**を聞く対象が違うと、仕事と力積で答えが別物になります。
「力の総量」について
力積は用語として定義がはっきりしています。力の総量という言葉は教科書で一義ではなく、力積の俗称になっていることもあれば、別の意味で使われることもあります。迷ったら仕事か力積かを区別します。
道筋に依存する・しないとは何か
始点と終点をそろえたうえで、同じ二点の間を通る経路を変えたとき、
- ある力がした仕事の合計が経路で変わるかどうか
を見ます。道のりは、物体が実際に動いた線に沿って足した距離のことです(曲がっていてもよい)。
摩擦(典型の非保存)
机の上を同じ A から同じ Bへ動かすとき、まっすぐと大きく迂回では、表面とのこすれの長さが違います。運動摩擦の仕事は、ざっくり こすれた距離に比例して増えるので、始点と終点のペアだけでは決まらない、つまり道筋に依存する、と言います。
重力(近似的なモデルで保存力)
重力がした仕事は、一定重力場の理想化のもとでは始点と終点の高さの差(鉛直の変位)が主役になり、同じ始点・終点なら仕事は一定といった性質が使われます。水平方向にだけ遠回りした分は、重力は鉛直・変位が水平なら仕事に寄与しない(直交する成分)などの理由で、摩擦のように道の長さそのものがそのまま仕事に効くわけではありません。
山道で上り下りを繰り返す経路では、各段で重力の仕事は入りますが、保存力としての重力では始点と終点の位置だけで決まる量(ポテンシャル差)と整合するように、途中の寄与が積分で打ち消し合う整理になります。
落下時間・空気抵抗
落下にかかった時間が長い/短いのは、力積の話では答えに効きます(空中にいる時間が違う)。
一方、重力だけがした仕事の話では、定義は力と変位の積分であり、秒数そのものが仕事の定義式に直接は入りません。同じ始点・終点の位置でも落下時間は変わり得ますが、重力の仕事は(重力のみ・モデル化の範囲で)位置の差で決まる、という整理です。
空気抵抗は重力とは別の力です。抵抗があると力学エネルギーだけでは足りない説明が要りますが、**「重力が保存力として道筋に依存しない」**という主張は、重力という力に限った仕事の性質の話として読むと整理しやすいです。
保存力・ポテンシャル(短い定義)
保存力(保守力)とは、一言でいえば、その力だけがした仕事が、始点と終点の位置だけで決まり、通った道の曲がり方では決まらないように書ける力のこと(として定義・整理されます)。そのおかげで ポテンシャル(位置エネルギー) という 位置だけで決まるスカラー を定義でき、力は そのポテンシャルが位置でどう変わるか(勾配のマイナス)から書ける、というパッケージになります。
**ポテンシャル(位置エネルギー)**は位置の関数として書けるスカラーで、保存力から力を勾配のマイナスとして導ける、と教科書でセットにされます。
保存力の例(重力だけではない)
保存力は 重力に限りません。 入門で早く出る例としては、たとえば次のようなものがあります。
- 理想バネの弾性力(フックの法則が成り立つモデル)
- 静電気のクーロン力(点電荷どうしなど、静電場として学ぶ範囲)
- 万有引力(二体問題などで、距離だけで決まる中心力として扱うとき)
「自然界には重力しか保存力がない」のではなく、どの力を式に入れるか・どう近似するかで、保存力としてまとめられるかが決まります。
非保存力の例
摩擦、粘性、(一般に)空気抵抗などは、非保存として扱うことが多いです。摩擦が非保存である主因は「仕事がマイナスだから」だけではなく、同じ二点間でも道の長さで仕事が変わる、という道筋依存です(前節の摩擦の話)。
関連
- 仕事とエネルギー(索引)
- 質点と剛体の概要(変位・スカラー)
- ニュートン力学の概要
- 力学(索引)