SOAR は、問題解決・学習・記憶などを 一つの認知アーキテクチャ として扱う研究用フレームワークです。生産系ルールはその表現手段の一部であり、エキスパートシステム製品のルールエンジンとは設計思想が異なります。
CMU での立ち上がり(1980 年代)
SOAR は カーネギーメロン大学(CMU) で、John E. Laird、Allen Newell、Paul S. Rosenbloom らの手によって 1980 年代初頭に形作られました。Laird の博士研究に端を発する、という説明が一般的です。
当時すでに Newell は GPS や 物理記号系仮説 に代表されるように、記号処理による問題解決の統一枠組みを追い求めていました。SOAR は、その延長線上で 「さまざまな問題解決法を一つのアーキテクチャに収める」 試みとして位置づけられます。
「汎用知能のアーキテクチャ」としての宣言
1987 年の SOAR: An architecture for general intelligence のように、一般知能(general intelligence) を志向する論文タイトルが象徴的です。生産系ルール・作業記憶・オペレータ選択といった機構は、人間の知的行動の再現という目的の一部として設計されています。
その後の展開と注意(名称の衝突)
実装はオープンソースとして継承され、ミシガン大学など開発の中心が移った時期もあります(世代や配布形態は文献で要確認)。
なお、セキュリティ運用分野の SOAR(Security Orchestration, Automation, and Response)は 頭字語が同じ別物です。本ノートの Soar は 認知アーキテクチャ の話に限ります。
ざっくりいうと
状態を保持しながら オペレータの選択と適用 を繰り返し、目標に向けて行動系列を組み立てます。チャンキング(経験の再利用)など、人間らしい学習のモデル化が議論の中心になりやすいです。
他との違い(目安)
- CLIPS / Drools(エキスパートシステム)は「ルールを実行して業務や診断に答える」用途が前面ですが、SOAR は 認知プロセス全体の理論と実装が前面です。
- ACT-R も認知アーキテクチャですが、記憶の数学モデルや心理学実験との対応など、アクセントの置き方が異なります(詳細は専門文献参照)。