ACT-R(Adaptive Control of Thought—Rational)は、人間の認知を 宣言的記憶と手続き的記憶などに分けてシミュレーションする 認知アーキテクチャ です。生産系ルールは手続きの記述に使われることがありますが、本体は心理学・認知科学寄りのモデルです。
理論の系譜(HAM・ACT から ACT-R へ)
ACT-R のルーツは、John R. Anderson と Gordon H. Bower が 1973 年に提案した連想記憶モデル HAM(Human Associative Memory) にまで遡るとよく説明されます。その後、手続き的記憶などを組み込んだ ACT 理論(1976 年の『Language, Memory, and Thought』などで体系化)へと広がり、ACT*(Act Star)などの版を経て発展してきました。
1990 年代初頭、Anderson は Rational Analysis(合理的分析) の観点から理論を再整理し、名称を ACT-R とした、という流れが文献で繰り返し語られます。Christian Lebiere らとの共同研究は、ACT-R 4.0 以降の実装や拡張とも結びつけられます。
カーネギーメロン大学(CMU)と研究コミュニティ
ACT-R は カーネギーメロン大学 を中心に保守・発展してきました。反応時間分布や fMRI との接続など、実験心理学のデータとモデルを突き合わせる文化が強く、エキスパートシステムの「業務判断をコードから分離する」話とは、問題設定が異なります。
Allen Newell の統一認知理論(UTC)への志向とも対話的に位置づけられ、認知アーキテクチャ同士の比較(SOAR との対照など)が活発です。
1990 年代以降の展開
1990 年代末以降は、宣言的手続き記憶の精緻化、脳イメージングとの統合、教育・HCI への応用などが進み、ACT-R 7 系などが現在の実装の代表として参照されます。名称の Rational は、上記の合理的分析ラインを示す、と読むのが一般的です。
ざっくりいうと
課題に応じて記憶モジュール間の流れを更新し、反応時間や誤りパターンなど、実験データと比較可能な予測を出す用途が多いです。
他との違い(目安)
- CLIPS / Drools(エキスパートシステム)が「システムにルールを載せる」ことに直結しやすいのに対し、ACT-R は 人間の認知過程の研究が主目的です。
- SOAR と並べて語られることが多く、どちらを選ぶかは仮説やタスク設計によります。